会員通信 2004 Spring
2004年 春号

  • 2004年04月15日


桜の開花も東北に移動したというニュースが流れている今日この頃。
なんとかギリギリでゴールデンウィーク前に、「会員通信・春の号」をお届けします。

コラム

鴨田 哲郎 旬報法律事務所

The News JUNPOHより

働いた分は、チャンともらおう!

昨年11月は不払残業撲滅月間でした。リストラで人が減る一方、残った人達はそのシワ寄せで長時間労働を強いられています。

いくら働いても残業代が出ない、残業代が月20時間までなどと制限されているという相談は後を絶ちません。労使ともにもらえるはず、払うべきものと知っているのが典型的な不払(サービス)残業。

しかし、不払残業はこれだけではありません。管理職になったら残業は付かない、というのは日本企業の”常識”ですが、これは大ウソです。残業代を払わなくても法律(労働基準法)違反とならないのは、管理監督者だけ。相当にハイレベル人-出退勤の自由があり、高い処遇を受けている人-でなければ管理監督者には当たりません。裁量労働だから、年俸制だから残業は付かないと言われている人も多いでしょう。しかし、裁量労働として残業代を払わなくても違法とならない条件は、かなり高く設定されております。現状の大半はこれを満たしておらず、違法な不払残業です。

給料は決められた時間に対して払われるもので、それ以上働けばプレミアをもらうのは当然です。社長を犯罪者にしないためにも、自分の時間を取り戻すためにも、不払残業と長時間労働をなくしましょう。

徳住 賢治 旬報法律事務所

The News JUNPOHより

小説「大黒屋光太夫」ツァールスコエ・セロ

ペテルブルグを訪れたことがある。家内と二人の旅であった。美しい町並み、エルミタージュ美術館の見飽きることのない美術品など思い出深い旅であった。郊外のツァールスコエ・セロにあるエカテリーナ宮殿の絢爛豪華さには驚かされた。内装がすべて琥珀でできている琥珀の間など、贅沢の粋が極められていた。このエカテリーナ宮殿に再会することができた。再会といっても、吉村昭著「大黒屋光太夫」の中での誌上対面である。光太夫は、1782年神昌丸で白子浦を出船、破船して漂流、カムチャッカ半島の小島に漂着し、10年に及ぶ極寒の地での過酷な日々を乗り越えて、帰国を成し遂げた。光太夫は数千キロの極寒の道程を踏破してペテルブルグを訪れ、エカテリーナ女帝に謁見して帰国の許可を得ることに成功した。その地がツァールスコエ・セロである。船員17名のうち帰国できたのは、わずか3名であった。数奇な運命と光太夫の胆力の大きさを描いた同著は、漂流記小説の傑作であると思う。

棗 一郎 旬報法律事務所

The News JUNPOHより

警視庁HIV感染者辞職強要事件

警視庁は、平成の初めから十数年にわたって、警察官として採用された職員において無断でHIV抗体検査を行ってきました。HIVキャリアの人を組織的に職員から排除していたのです。

この無断検査で、HIV感染の事実が判明した一人の男性が、警視庁から採用を拒否され、警察学校への入校辞退願い書を書かされました。事実上の免職でした。このような無断検査と辞職の強要は違法だということで、警視庁と検査を行った警察病院を被告として慰謝料の支払いを求めた裁判の判決が、昨年5月28日東京地方裁判所で言い渡されました。原告の全面勝訴でした。 たとえ警察官という激務の仕事であってもHIV検査の必要性すらない、違法な検査であるという判断でした。

わが国では、まだまだHIVキャリアであることによる就職差別や職場での差別がなくなりません。この判決がキャリアの人たちに少しでも希望と勇気をもたらすものであってほしいと心から願っています。

お薦め本 From the reader in the wood

弁護士 江森 民夫 東京中央法律事務所

「家永三郎の残したもの引き継ぐもの」 太田堯、尾山宏、永原慶二 編/日本評論社 刊

故家永三郎氏は1950年から高等学校日本史教科書を発行してきたが、検定制度のもとで原稿記述の修正を求められたり、原稿の修正が認められないという事態に直面し、1965年と1984年には国に対し損害賠償請求訴訟を、また1967年には教科書検定処分の取り消し訴訟を提起した。

最終的にはすべての訴訟が終了したのは、1997年の第3次訴訟の最高裁判決であり、実に32年にわたる裁判闘争が闘われてきた。そして家永三郎氏は、2002年12月29日89歳で死亡した。なお、私も、総評弁護団幹事長になる前までは教科書訴訟弁護団の構成員であった。

今回の出版はその表題のとおり、教科書裁判を担ってきた家永氏の死亡を契機に出版されたものであるが、その内容は教科書訴訟を闘った家永氏の思想と生き方を明らかにし、これをどう継承させるかを共同して検討すると言うきわめてユニークな内容となっている。 なお家永氏については生前国内外の学者・研究者によりノーベル平和賞の推薦運動が行われており、国際的にも評価された学者であった。

本書は第1部「家永先生の精神と学問の今日的意義」と第2部「自由・平和・民主主義を求めて-家永三郎先生の遺志とと活動の継承」の2部構成となっており、1部は家永氏の追悼集会での報告を中心に構成されているがその内容は一つ一つ貴重な論文となっている。2部では、その表題の通り家永氏の遺志と「活動の継承」についての論文が多数掲載されている。

この2部を見るとさながら、今日闘われているわが国の人権運動、教育運動の全体像が理解できるといっても過言ではない。

家永氏という一人の人間をとおして日本の人権問題を考えるという特徴ある本書を多くの方が読まれることを是非すすめる次第である。

弁護士 宮里 邦雄 東京共同法律事務所

「団結権の課題と展望」 片岡昇 著 / 有信堂 刊

  1. 非正規雇用化が進む中で低下の一途を辿る組織率、組合員意識の希釈化、活動力や交渉機能の弱体化など、わが国の労働組合は、いま試練に立たされている。これから労働組合は、その役割を果たしていけるのか、その存在意義と将来像はどうなるのか、はたして活路を見出しうるのか…。本書は、そのスタイルが示すように、労働組合を取り巻く状況と問題点を明らかにし、団結権の課題と今後の展望を理論的に考察したものである。
  2. 第1章・序論は、わが国における団結をめぐる現代的課題を俯瞰する目的で」新たに執筆した論稿であり、戦後労働改革の成果と限界、高度経済成長と労働運動の変化、日本的経営・労使関係の展開を歴史的に跡づけ、グローバル化・情報化のもとでのわが国の労働組合と団結権の将来像を考察している。
    第2章は、諸外国の労働団体方が当面している問題点を明らかにし、わが国の労働団体方について予想される問題を解明しようとしたものである。
    第3章は、グローバル化と規制緩和のもとで進む労働法改編の問題点を指摘したうえで、グローバル化と規制緩和にこうするには、「強い労働組合運動の存在」こそが必要であることを論じている。
  3. 本書は、わが国の労働組合と労働運動について、過去・現在・未来を労働法研究者の立場から理論作業によって解明しようとした著作であり、これからの労働労働組合と労働運動のありようについて本書からわれわれは、多くの基本的かつ重要な示唆を得ることができる。
    昨年くれには、「労組組織率ついに2割きる」というショッキングなニュースが流れた。
    著者が「はしがき」で述べるとおり、変化の中で新たな様々な問題が顕在化しており、労働組合の意義と役割はいっそう重要性を増している。団結の活性化・労働運動の再生は、本書が指摘するような基本的な視点を真に運動を通じて実践しうるか、にかかっている。

 


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編集部より

ゴールデンウィークの予定は決まったのでしょうか。日本経済も上向き傾向で、テロ騒ぎなどで減少傾向だった旅行マーケットに久々に活気が戻ってきたようです。楽しい旅行のエピソードなど、次号への投稿お待ちしております。それでは「Have a nice day!」

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